レポート 銭屋五兵衛を想う【霜の花茶会】その④
当日。
天気はこの時期の金沢にしては珍しい快晴。
申し分なし。
茶室【拾翠園】へと入ると、その狭さに改めて驚く。
三畳向切。
茶室の大きさと、そこで行う茶の優劣に相関関係は無いと思うが狭い茶室ならば人と人の距離が近いためやはり緊張感が増す。今回初めて小間で茶をやって分かったが、ここまで狭いとそこで自分の考えと裏腹な言葉はまずでてこない。他者に対し自己を開示せずにはいられない。お互いの考えが詳らかになり主客の交わりがなされる。
隠し事などせず、互いの心が交わりあい自分と他者の境目が消失していく。ましてや茶室に土、茶碗も泥のような塊を使うとなると自然とも一体化し自己という存在が融解していく。。
利休の二畳の茶室とはそんな思考を閉じ込めたものだったのかもしれない。
道具を置き合わせ点前座に座ると客との距離の近さを更に実感する。
小間に白磁の水指に寂びた茶器、大振りの茶碗が置き合わされるとモダンでなんとも美しい。
菓子皿に、この日のためにオーダーした菓子を添えるとこれもまたあう!
白菊に霜が降りたような可愛らしい菓子。
名前はそのまま【白菊】では表現が直接的すぎるので【初霜】とした。
床には軸がわりに茂八郎の願文を。
大酒をくらって失敗したのだろうか、今後千日は酒を断つと誓っている。
脇には九谷の空の杯を添えておく。
そして、銭屋事件や、父親のことなども頭をよぎり、ポーズではなく自然と頭を垂れ手を合わせた。
さて、文が長くなってきたので端折るが、手前味噌ながら来てくださった皆さんには概ね喜んでいただけたようでホッとした。
忘れられないのは、茶を飲み終わった後も茶室で語り合う皆の姿だ。
先に、自己開示をせずにはいられないと書いたが全員が和やかにいつまでも団欒している様子は、微笑ましいというか、亭主冥利に尽きる。
小間という空間の不思議な力を認めつつ、今回の茶会のレポートを終えようと思う。
参加いただいた皆様、そして話をご提案くださった浜さん、ありがとうございました。